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2020年度シラバストップ > 高Ⅲ年6組 > 理科 > 物理

教科
科目
学年・組
授業時間
担当者
理科
物理
高Ⅲ年6組
週6時間
必修選択
秋田・清水

到達目標


 この世界を支配する最も基本的な、究極の法則はなにか?一見違うものに見えるいくつかの現象は、実は同じものではないか?この問に対して非常に多くの研究者達が日夜議論を交わしています。この授業では、人類が積み重ねてきた過去の遺産を通じて、新しいアイデアや概念がどのように生み出されてきたかあるいはどのように統合されてきたのかを感じてもらいます。

 より具体的には、到達目標として以下の各項目を据えます。

1.各物理量の定義を理解し、そこから導かれる公式の意味を味わう
2.さまざまな公式が導出される過程とその必然性を理解し、自身で議論を再現できる
3.未知の(初見の)現象にたいして、物理学の原理主義的な態度からアプローチできる
さらに、これらの目標達成を通じて、
4.自然現象に宿る法則の数式的な表現と直観的なイメージを自由に行き来できる
の実現を目指します。

学問ほど多くの人が携わり、寄ってたかって創ってきた芸術作品はあるのでしょうか。せっかく“学ぶ”なら、人類がこれまで築いてきたかけがえのない財産につながっているということを感じとって行きましょう。最高の芸術作品を余すところなく味わってほしいと思います。

授業の進め方・学習方法


高校2年次の物理基礎に比べ、演習の時間が増えます。授業内では基礎レベル〜入試標準レベルの問題を取り扱います。
東大京大東工大などの志望者については、放課後講座の受講を【強く】勧めます。

進め方
 授業は、板書やプリントを主に使用し、必要であれば映像資料や演示実験を適宜取り入れます。配布資料や教科書・ノートという基本的なものを準備した上で授業に出席することを求めます。

学習方法
 自然現象の原理を追及し、その本質を見極める探究心を持てるかどうかが、理科の実力がつくかどうかのカギです。わからないことがあるのが当然であり、それに対してどうアプローチするか?なぜそのアプローチをしたくなるのか?と、内容について常に問をつくることを意識しましょう。
 また、授業で議論するさまざまな内容を自分自身で再現する練習を積みましょう。定義から出発して、論理の必然性を追いながら定理(公式)の導出を行い、各概念の相関図から全体像を把握しましょう。この後でもまだ余力がある場合には、問題演習に進みましょう。いろいろとコツはありますが、ここに書くにはスペースが足りないので授業の中で適宜話していきます。
 「理解しよう」と思うと教科書やテキストを何度も再読する人がいますが、実はその行動のあまり効果は高くありません。単に繰り返し読むのではなく、「問」を作ってから読み始めたり、テキストを閉じて内容を自分で再現してみてください。

 また、知識を覚えることを遠ざけすぎないように気をつけましょう。知識というものは単なる字面の暗記ではなく、複数の事実や事項から考え出された成果物でもあります。不細工でもいいですから、あらゆるものを自分なりの言葉で表現してみましょう。そうして自分の中に新たな知識・体系が広がっていくことを楽しんでください。

授業スケジュール


学期
学習内容
1学期
~1学期~【電磁気学】

第3章 光
  1.光の性質
  3.光の干渉と回折
  ※2.レンズについては電磁気学を学んだあとで行います。

 高校3年では、まず電磁気学を学びます。電磁気学には、磁場や電位などの抽象的な概念が出てきますが、力学で学んだ基礎に基づいて理解できます。新学期に向けてしっかりと復習をしておきましょう。特に、位置エネルギーから運動の概要を理解できることが望ましいです。

第4編 電気と磁気

 第1章 電場
  1.静電気力
  2.電場
--電場を導入し、基礎方程式からクーロンの法則を求める現代的な方法を用いる
--ガウスの法則
  3.電位
--力学との対応を用いてエネルギーの議論を行う
  4.物質と電場
--電場が生じている事による応用例

続いて、電荷分布が時間変化する最も簡単な例として、荷電粒子の1次元的な運動を考える。
 第2章 電流
  1.オームの法則

静電荷に対してはたらく力として電場を定義したが、ここでは時間変化する電気量にはたらく力として磁場を定義する。ここでもできる限り現代的な視点から整理しつつ、基本原理と諸公式との対応を見ながら体系的に理解を進めていく。
 第3章 電流と磁界
  3.電流が磁場から受ける力
  2.電流のつくる磁場 --アンペールマクスウェルの法則
  1.磁場 --モノポール非存在
  4.ローレンツ力

◎電磁気学の最後の法則であるファラデイの電磁誘導の法則を知り、これまで学んだ4つの基本原理に基づいて電磁波が存在すること、および電磁気による相互作用が近接作用として理解できることを学ぶ。

 第4章 電磁誘導と電磁波
  1.電磁誘導の法則
  5.電磁波


 ※ここまでの枠組みが十分出来ていれば、2学期に学ぶ内容はその応用・各論でしかありません。ゆっくり丁寧に学びましょう。

1学期中間試験
 まずは各物理量の定義を正確に把握しましょう。これまで以上に、電磁気分野は抽象的な物(日常感覚とは乖離したもの)を取扱います。電荷の運動に関する力学の問題として電磁気学を見れるようにすることも重視する要素の一つです。

 また、ここまでで電磁気学の枠組みはすべて完成しており、試験ではその体系的な理解を問います。また、電場や磁場といった基本的な概念の正確な理解や、荷電粒子の運動における力学的な取扱いなどを問います。また、電磁誘導の法則の理解はもちろん、これまでの知識を用いて存在が示される電磁波についても自身で議論の流れを再現できるように練習を積むことが重要になります。
1学期中間試験
1学期

~2学期~【電磁気学の応用・現代物理学の発展】

続いて、電磁気学をマクロな対象に適用した成果として、回路理論について学ぶ。
電磁気学の工学的応用として以下の4点について学ぶ。
 ・回路素子(抵抗、コンデンサー、コイル)
 ・直流回路
 ・交流回路
 ・インピーダンス

教科書の対応範囲は次の通り。
第2章 電流
  2.直流回路
    ※第1章5.コンデンサー
  3.半導体

 第4章 電磁誘導と電磁波
  2.交流の発生
  3.自己誘導と相互誘導
  4.交流回路


1学期期末試験
 回路理論(エレクトロニクス)について学びます。例によって例のごとく、まずは基本的な物理量の定義をおさえましょう。各物理量の定義と定性的な議論から得られる結論を把握し、それらがこれまで学んだ電磁気学を利用するとどのように理解されるのか。それらをどれだけ自身の言葉で言語化できるようになったのかを問います。直流や交流のそれぞれについてやや複雑な計算もしますが、立式の根拠と結果の吟味を行う部分が物理です。途中の計算の煩雑さに惑わされないように注意しましょう。
1学期末試験


学期
学習内容
2学期
◎電磁気学の工学的な応用のひとつとして、電磁場が回折を起こさない範囲の現象を取り扱う幾何光学という分野について学びます。
 ・凸レンズ、凹レンズ
 ・レンズ公式
 ・フェルマーの原理 ※現代物理学の最も重要であろう概念のプロトタイプ


◎これまで学んできた物理学の集大成として、一般には前期量子論と呼ばれる原子物理分野の事項について触れます。あらたな実験事実、力学や電磁気学の理論体系、波動論などすべての要素を用いて新しい概念を構築していくため、これまでで学んだ物理がどの程度習得できているかがこの分野の理解を決めます。逆に、ここまでの過程がしっかり歩めていれば、概念的な新しさはあるが基本的な考え方はこれまで通りだという分野でもあります。

第5編 原子

 第1章 電子と光
  1.電子
  2.光の粒子性
  3.物質の波動性

 第2章 原子と原子核
  1.原子の構造
  2.原子核
  3.原子核の崩壊
  4.核反応と各エネルギー
  5.素粒子

2学期中間試験
 現代物理学が発展する契機となった現象について、これまで学んだ物理を総動員しながら理解をしましょう。これまで2年間で学んだ全分野が多彩に絡み合っているため、あえて試験範囲を述べるなら「高校物理全体」です。ミクロな世界を記述するためのすべての出発点である質点の力学、多粒子系へ拡張した剛体の力学や流体を扱った浮力や波、我々が知っている現象のうち90%ほどを説明することができる電磁気学、多粒子系の極限としてマクロな有効理論の強さを学んだ熱力学。これらすべてに対して、確固たる根拠とともに意見を述べ、自分なりの表現で語れるようになってください。

2学期中間試験
2学期
入試演習など。

2学期学年末試験
 これまで2年間の総まとめとして、物理学の考え方がどのように身についているかを問います。3年次のこの試験は、学期末試験ではなく学年末試験として設置されます。
学年末試験


学期
学習内容
3学期
3学期末試験は実施しない

成績評価方法


種別
割合(%)
評価基準など
定期試験
60
定期試験60%、平常点40%で評価します。
レポート
0-40
小テストなど
0-40
授業での取り組み状況
0-40

教科書・教材/参考書/参考サイト


教科書・教材
書名
出版社
教科書番号/code
備考
総合物理1・2
数研出版
物基/306
教科書
体系物理
数学社
問題集

参考書
書名
著者
出版社
コード
備考
物理をはじめからていねいにシリーズ
橋元 淳一郎
教科書以外のやさしい参考書がほしい人向け。
新・物理入門
山本 義隆
数学が好きな人におすすめ。体系的に物理を学べる。授業の深度はこれと同程度を想定。
理論物理学への道標
杉山 忠男
河合出版
諸現象の背景をよく知れる、参考書兼問題集。最難関大志望者向け。

担当者からのアドバイス


 物理では、すでに学んだ内容をもとにして新たに理解を進め、有機的なつながりを感じていくという場合が非常に多くなります。そのため、ハイレベル、ハイスピードな授業展開についてこれるように復習を確実に行いましょう。この概念を説明できるか?10歳の子どもに教えるならどう話すか?その概念を使って表されているこの式の意味はなにか?それが成立する根拠は?その背景にはどんな原理があるのか?他の場合に応用は可能なのか?など、知的好奇心を最大限に刺激して考え続けましょう。物理学は、あなたの飽くなき知的好奇心にどこまでも耐えうるであろう学問です。